鏡の国の…… 世界はすべて繋がっていて、すべては1つの国である。 たった一つの国中、今日も忙しなく彼らは働く。 「ねぇ、アリス! 聞いた? 例の王妃様の担当者の話!」 「あぁ、うん、聞いた聞いた。すっごい落ち込んでるんだって?」 「そうそう! 自分が正直すぎたばっかりに、かわいいお姫様が王妃様に殺されかけちゃったんだ、って」 「何だっけ、毒りんご? 権力あるくせに自分でやっちゃうんだから、どんだけ憎いのって話よね。でもさ、結局そのお姫様、王子様に助けられて幸せになったんでしょ? だったらいいじゃんねぇ。……もしかして誰も教えてないの?」 「だって、あいつ生真面目すぎて、ちょっとおもしろいんだもん」 「ひっどー……」 広い広い国では、絶えず何かが起こっていて、その噂は瞬く間に国中を駆け巡る。 「アリスアリス! あの話、聞いた?」 「えー……どれ?」 「悪魔に地上に落とされて割れちゃった、って話」 「あぁ、それで一部が男の子の目に入っちゃったってやつでしょ? でもあいつ、世の中すべてを醜く見せるとかって、ひねくれてんだし自業自得なんじゃない? あたし、あいつ嫌いだし」 「や、でも、男の子がかわいそうじゃん」 「あ、そっか。え、男の子ってそのままなの?」 「ううん、その男の子の恋人だか幼馴染だかの女の子が、男の子を助けに行ったみたい。彼のためにあんな寒い城に行っちゃうなんて、愛よねー。あ、そのときにあいつも男の子の中から出られたんだって」 「……そのままでもよかったのに」 「だからー、あいつみたいにひねくれちゃったままだったら、男の子がかわいそうなんだってば!」 「あ……」 絶えず何かが起こるから、時には自分が噂の的になる。 「ねぇねぇねぇ、アリスの話聞いた?」 「聞いた聞いた! うっかりにもほどがあるよねー」 「ほーんと。いくら名前が同じで親近感わいちゃったからって、こっちの世界に女の子入れちゃうなんて」 「だよねー。向こうの子ってハンプティ・ダンプティとか見たことないんでしょ?」 「こっちの人、わけわかんないの多いしね」 「後でティーパーティでもして慰めてあげようか」 「そうだね、落ち込んでるだろうし」 世界はすべて繋がっていて、すべてはひとつの国である。 鏡の国は今日も大忙し。 end 白雪姫、雪の女王、鏡の国のアリス、etc……。そんな鏡の中の妖精たちの話。 070509(初出051112) 睦月 朔 |