そして、僕は今日成人式を終えて、年齢的にも社会的にも大人になった。これで、胸を張って早紀さんに、大人になったと言える。
 早紀さんの携帯の番号を呼び出す。発信してから、コールが1回、2回、3か……、途切れた。
「はい、もしもし、昴?」
「早紀さん……、僕今日成人式だったんだ」
「あぁ、そうよね。おめでとう。……なぁんか不思議な感じねぇ。生まれた時から知ってるから……大きくなったものね」
「うん……僕、やっと」
「お酒は飲んだ? 煙草は?」
「え、や、まだ、だけど」
「まさか今まで一度もないなんていうんじゃないでしょうね」
「それはやっぱり、法律じゃ……」
「は!? え、あんたそれ本気? ……やっぱりまだまだお子ちゃまね」
「…………」
「昴? どうしたの?」
「なんでもないよ。じゃあ、またね」
 それ以上僕に何が言えただろう。今度の傷はかなり深い。修復するにはかなりの時間を要するだろう。
 何度も何度も傷ついて、それでもどうして僕は……。
「昴?」
 そういえば、まだ通話を切ってなかった。ずっと早紀さんに繋がったままだったのか。少し心配そうな早紀さんの声は、ちょっと嬉しい。
「あ、ごめん、切ってなかったね」
「もう、どうしたのかと思ったじゃない」
「ごめんなさい」
「昴、また今度うちに来なさい。一緒に飲みましょう?」
 きっと電話の向こうの彼女の笑顔はいつもどおり綺麗で、それだけでなんだか傷がだいぶ癒えたように感じる僕は、かなり現金だ。
 結局、僕は彼女が大好きなのだ。それはまるで刷り込みのように。




「亮介、プリンのカラメルが食べられないと、大人にはなれないんだぞ」
「そうなの昴くん!?」





end
※お酒と煙草は20歳から。飲んで吸っても大人になれるわけではありません。

いまだにプリンのカラメルのコーヒーも苦手です……。残したりはしませんが。
070509(初出070401) 睦月 朔