「って話知ってる?」 「いや、知らない」 「でしょうね。私は、この話の月が私で、太陽はあなただと思ったわ」 「じゃぁ……君は僕が憎いわけ?」 「……月は太陽を憎んでたと思う?」 「さぁ……」 なにそれ、なんて言ってかすかに微笑んだ彼女に、愛しさと寂しさを感じた。 明日から僕らは違う道を歩き出す。 今までは互いに縋りながら同じ道を歩んできたけれど、これからは、お互いの求めるもののために、手を離して。 僕らも月と太陽のように、これからはすれ違っていくんだろうか。そもそも、これから僕と彼女の道がすれ違うことすらあるのかわからない。 「何でその話をしたの?」 「別に。なんとなく……今日の月が綺麗だったから」 「あぁ……」 彼女につられて見上げた月は、満月には少し足りなかった。 僕は、月が太陽を憎んでいるとは思わない。月が太陽を憎んでいるなら、月の光がこれほど綺麗なわけがない。 きっと月は太陽を羨んでいる、そう思う。 もし、彼女が自分を月だと言うなら、僕は自惚れていいんだろうか。月が太陽を羨む限り、僕と彼女の道がかけ離れてくことはないと、思っていいんだろうか。 「ねぇ」 「なぁに?」 「その話の作者、誰?」 「あぁ。私よ」 珍しいでしょ、と月を背にして微笑んだ彼女は、この上なく綺麗だった。 あぁ、こういうことか、と僕は太陽に同情した。 =そして、君と僕。= ...that's all 月と太陽より、月と地球のほうが互いに依存してる、と思う。 けどそれはそれ、これはこれ(笑) 070509(初出061111) 睦月 朔 |