=月=



私を指す言葉はたくさんある。
それは物であったり、生物であったり、神であったりする。
でもどれも結局私の本当の姿を表しているわけではない。
私の真実など誰も知りはしない。

そもそも私に真実など有り得るのだろうか。私自身が虚構の存在でないと、誰が保証してくれるというのか。

世界が暗闇に満ちて、私の光だけを頼りにしていたとしても、それすら虚構でしかない。私自身は実際には光を発しておらず、あれの光を受け止めているだけだ。

なぜ、私があれの光を受け止めなければならない。
私はあれの光など求めてはいない。私が望むのは世界だけ。

けれど世界は私を通して、あれを見ている。私を求めながら、その実、私の先にあるあれを求めている。あぁ、なんと忌々しい。

あぁ、どうして世界は私のものにならないのだろう。


=太陽、=


私が手にしたものは限りなく多い。
言葉で表すならば世界だ。世界を私は手にしている。

けれどなぜ、すべてを手にしたとは言えないのだろう。
私が望むあれを、手にしたと言えないのだろう。
あれは私の手にあるように見えて、決して私を見ようとはしない。いや、見てはいるけれど、あれは憎しみの目だ。

なぜ、私が望まないものは私を求め、私が望むものは私を拒むのか。

世界が私の光に包まれる。そのとき世界は私のものになる。
私の光はあれにも届いているはずなのに、あれはそれを受け入れず、撥ね返す。

私が手にしたものは果てしなく、私が手にしたいものはただひとつ。

なぜ、あれは私の光を受け入れない。私にとってあれだけが、ただひとつの真実であるというのに。あぁ、なんと愛しい。

あぁ、手にした世界のなんと空虚なことか。



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いや、ほんと何が言いたい、って感じなんですけど、とりあえず、次行ってください。