残暑見舞い 夏、彼女は実家に帰る。北海道なんてもう海外だ。 住所を知ってはいるけれど、訪ねるなんてできやしない。 だから、僕の代わりに葉書を送る。文章に思いを乗せるのは得意じゃない。暑中見舞いのつもりが残暑見舞いになってしまった。 「残暑お見舞い申し上げます。北海道は夏でもやっぱり寒いのかな。また、新学期もよろしく」 僕が送ったのは、右隅に金魚のついた葉書だった。 彼女から届いたのは、裏面いっぱいに青い空が広がった葉書だった。 「残暑お見舞い申し上げます。こっちの夏よりもそっちの春のほうが暖かいかも。また、新学期もよろしくね」 その写真は彼女が撮ったものだった、と後で聞いた。 春に満開の桜の写真を撮ったことは伝えられなかった。 next→体育祭 5部作の2。 |